バクテリア(微生物等)の利用について
 菌糸を直接食べさせるより、バクテリア等の動物性微生物に菌糸を食べ物として与えて、その結果、繁殖したバクテリア等の微生物を同化吸収した方が驚く程確実に大きく成ります。
 つまり、菌糸ビン製作時にバクテリア等の微生物を菌床に混ぜて菌糸ビンの中で繁殖させることにより、菌糸ビンは生きたタンパク質の固まりに成ります。意味無く添加したタンパク質とは異なり、腐敗することがありません。
 更に、幼虫の成長に合わせて、バクテリア等も増え続けますのでタンパク質の補給が充分に行えます。牛や馬等草食動物の胃と同様に菌糸ビン内部と幼虫の体内で反芻(はんすう)を行っていると推測できます。
 共生微生物を意識して利用するクワガタの新しい飼育方法です。
 
国産、外産全ての幼虫に共通した重要なことです。

注意

 クワガタの種類により反芻能力が異なり、与えるバクテリアの量を調整する必要が生じます。
タンパク質の補給

 幼虫の成長に関係する消化管内バクテリア等の微生物は、幼虫にとって重要なタンパク源です。つまり、体外から摂取できるタンパク質には限界があり、更に餌の嗜好性が悪ければ食べないので大きく成れば成る程絶対量が不足します。
 しかし、体内で繁殖するタンパク源になるバクテリア等の微生物は、体内にバクテリア等の餌になるモノさえ有れば、幼虫の意志には関係なく体内で増えるのでタンパク質の補給が食欲に関係なく続くことになります。
 幼虫が体外から摂取する餌は、幼虫とバクテリアの両方にとって成長・新陳代謝の基礎になるミネラル類,アミノ酸、ビタミン等のキノコが生成した成分が含まれていることが重要です。
発想の展開

 幼虫は食べ戻しを行うことから、菌糸ビンを牛や馬等の反芻(はんすう)動物の胃と仮定し、更に幼虫自身も反芻を行っていると解釈して飼育を行います。菌糸(きのこ)、バクテリア(細菌)、プロトゾア(原生動物)等微生物の利用をもっと考えるべきだと思います。

 ◎菌糸だけの飼育は限界に来ていると言えますので、その突破口としてバクテリア等の共生微生物の重要性を知ることが必要です。
飼育温度

 幼虫の飼育温度は、菌糸とバクテリア等、微生物の生活環境を良く認識して温度を調整することが大型作出の秘訣に成ります。つまり、菌糸とバクテリア等の安定した繁殖温度に合わせることが最も適した温度になります。私は、19度〜22度位が適していると思います。
幼虫に適した餌

 腐敗、発酵、分解の微妙な違いを理解して、バクテリア等に因って分解された物を使用する方が適切です。餌にプロテイン等のタンパクを入れると状態にも因りますが、腐敗すると嫌な臭いがして使い物に成りません。腐敗に因り発生したアンモニアは微生物により最終的にタンパク質に合成されてしまいますが、調整により、極力臭いのしない餌が適しています。
 産卵マットもバクテリアに因って良く分解した物を使用した方が遙かに効率が良く、特にアンタエウス等はマットの状態が産卵に影響し、孵化した幼虫が十分育たないマットは適しません。
バクテリアに適した餌

 幼虫は菌糸を食べて大きくなる”という考え方は捨てて下さい。幼虫の体内でバクテリア等の共生微生物が繁殖できるかどうか?”が決め手になるので、幼虫に適した餌というよりバクテリア等の微生物に適した餌を与える方が有利です。
 栄養価の高い生きたタンパク質(バクテリア等)を作ることが重要です。
しかし、体内で利用できるバクテリアの量は種類により異なりますので調整が必要です。
菌糸ビン内の空気

 バクテリアは酵素を出し、木材を分解してタンパク質を作ります。しかし、木材の中にはタンパク質の原料の1つである窒素は必要量含まれているとは思えません。
 従って、タンパク質を合成するためには、バクテリアは空気中の窒素を利用していると思えます。多少バクテリアの繁殖に合致しない面もありますが、菌糸ビン内部の換気に注意することは結果として幼虫の成長に影響します。
 蓋だけで無く、容器の底にも小さい穴を開けて下さい。プラボトルは、その点容易です。
水分について

 多い方が確実に大きく成ります。特に動物性微生物(バクテリア等)はキノコの菌糸と異なり水分の保持ができず、繁殖(細胞分裂)に影響が出るからです。
 顕微鏡を用いて調べた限りでは、幼虫体内でのタンパク源となるバクテリア等の共生微生物の密度は水分の量に比例して高くなります。つまり、排泄した糞が乾き気味の幼虫は大きくなれないと言うことです。
 水分の多い餌は縮みが多いという考え方は間違っています。
縮みについて

 3齢終期の幼虫は餌を食べなくなり、このことが”縮み”を起こす原因の一つと思われます。しかし、体内で増え続けることが出来るバクテリア等の共生微生物が体内に存在すれば、幼虫の意志には関わりなくタンパク質の補給が続くことになりますので結果として大きな蛹になることができると思われます。